将来計画及び運営方針 237
5-6 分子物質開発研究センタ−の現状と課題
分子物質開発研究センタ−は旧化学試料室より発展したパイ電子開発研究部に加え,新たに3つの研究部を創設し,また,旧 化学試料室,旧極低温センタ−および旧機器センタ−の物性機器関連部門の担っていた化学試料,低温冷媒,物性機器の管理 維持等に係わる研究支援業務を旧組織より継承して,平成 9年 4月に発足した。初年度に当たる本年度は,本センタ−の発足に 伴う組織変更に付随した業務の移管を実施しつつ,所内外の研究支援業務を前年度に準じ遂行した。加えて,3名の新センタ− 助教授の着任のための作業が進められたが,新センタ−助教授の新しい研究活動について評価を行うことは未だ時期的に不可 能な状況である。しかし,本年度発足した本センタ−の現状を点検し今後の改善への問題点を考えることは有用な事であると思 われる。
5-6-1 分子物質開発研究センタ−の基本的な性格
分子物質開発研究センターの最大の使命は分子科学に新しい展開をもたらす可能性のある新らしい分子物質を開発し,分子 科学の新分野の開拓とその飛躍的な発展を図る事である。また,同時に本センターは従来,旧化学試料室,旧極低温センターお よび旧機器センターの物性機器関連部門が支えてきた分子科学研究所内外の研究者に対する研究支援業務,即ち,共通性の 高い物性機器の集中管理と公開,低温冷媒の液化,供給および化学試料の分析などに関する業務を引継いでいる。従って,本 センターは研究系とは異なり,独自の開発研究の遂行に加えて分子科学研究所における研究活動に対する支援業務の円滑な運 営に対して責任を負っている。
本センターは助教授をリーダーとする4つの独立な研究グループをもって構成されている。助教授は独自の開発研究を推進す るとともに研究系の研究室と緊密な協力研究を行い共通の研究課題を遂行し,成果を挙げることが要請されている。現在の研究 課題は分子科学研究所で全所的に提案されたものの中から4件が選択され,本年度実施されたセンター助教授の公募はこれら の研究課題の主旨に沿って実行された。この様にセンター助教授は,研究の面からも従来の研究系助教授とは異なった役割,即 ち,課題研究の推進が期待されている。初年度にあたる本年度は,旧化学試料室より本センターに移ったパイ電子開発研究部の 山下助教授以外の3研究部の助教授の着任が年度末に近い時期となったために,新助教授については本格的な研究活動には 至らず,次年度以降のための研究環境の整備に費やされた。独自の研究や課題研究は次年度以降に進展するものと期待される。
物質開発研究の本格的な推進には多人数の研究者の協力が不可欠であると一般的には考えられている。本センター助教授 が二人程度の少人数のグループで如何にすれば,研究系との協力研究やセンタ−業務に関する仕事等とのバランスをとりつつ, 独自の研究をも展開して行く事が可能であるのかを検討する事は次年度以降の最も大きな課題である。
5-6-2 センター組織
分子物質開発研究センターは助教授をリーダーとする4つの研究部,パイ電子開発研究部,融合物質開発研究部,機能探索研 究部および分子配列制御研究部からなる。また,センター助教授には助手1名をつけることが決められている。現在,本センターの 助手は3名である。旧化学試料室から山下助教授とともにパイ電子開発研究部に移動した1名を除く2名の助手は旧機器センター の改組に伴い本センター所属となった。しかし,現在,この2名は旧機器センター以来の研究支援業務の分担とセンター設立以前 からの研究が継続されており,旧化学試料室から移動した山下助教授を除く3名の新センター助教授のグループの助手の確保が 各研究グループの研究組織の正常化のための最大の課題である。また,本センターは研究支援業務として旧化学試料室の化学 分析,実験廃棄物の管理,旧極低温センターの液体ヘリウムの液化・供給,窒素の供給および旧機器センターの物性機器の維持 管理および所内外の利用者へのサービス等の業務を担当している。本年度のこれらの業務は,主に,旧化学試料室,旧極低温セ ンターおよび旧機器センターから新センターへ所属替えとなった技官と助手によって組織替えによる不連続性を生じさせないこと
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を最優先して運用された。しかし旧機器センターとは異なり分子物質開発研究センターでは研究支援業務のための助手は置か ず,また,技官もセンター全体で確保し,業務に当たることになっている。従って,技官の業務の分担等に関してはセンター長が一 般的な責を負うものと思われるが,技官の業務内容のレベル維持・向上や新技術の導入などについて具体的に考え,計画を推進 する体制は未完成である。
前述のごとく,本センターは平成9年 4月に小林センタ−長,山下パイ電子開発研究部助教授,3名の助手および5名の技官で 発足した。本年度は組織替えの初年度であり,昨年度までの旧組織における各人の研究支援業務の分担を踏襲し新組織として の運営にスムースに組み込むことに重点を置いて業務が運行された。しかし新センター助教授が揃う明年度には,センター助教 授,助手の研究業務分担および技官の業務内容,将来への展望について検討がなされることが必要であろう。また,センター関 連業務に加え,助教授が増えたことに伴う事務作業の増加に対する体制の強化も課題となるであろう。
5-6-3 研究室に関する環境
平成9年 4月の新センターの発足に伴い,旧機器センター棟は分子制御レーザー開発研究センターの管轄となり,旧機器セン ターに所属していた物性機器を担当していた助手二名および技官一名の居室,研究室の確保,および旧機器センター棟に設置 されていた物性関連機器を新センターのスペース内に移設することが必要となった。このため旧低温センター棟の部屋の割り振 りを調整し直し,居室と装置室を割り当て,本年度内に実験設備の移転を完了させた。しかしながら旧極低温棟のスペースに全 面的に依存したこのような対応は緊急避難的な側面が強い。新センタ−の研究及び事務関連作業の環境整備は今後の継続的 な重要課題である。
分子物質開発研究センターは新たな分子物質の開拓研究を目的として,研究系との協力の下に研究課題を推進する事が期 待されており,同時にセンター助教授は独立な研究グループを構成し独自の研究を推進することもまた要請されている。センター 助教授のグループの実験室,居室としてこの目的にかなったスペースが確保される必要がある。センター助教授の研究遂行には 合成実験室の必要性が高く,旧化学試料棟の実験室の整備が重要である。また,3名の新助教授のグループが使用することが 出来る(実験)室としては実験棟に8つの室が予定されている。これらの室の可成りの部分を化学合成の可能な実験室に改装す ることも必要となるであろう。これらは次年度の検討課題である。なお,新助教授の居室は研究棟に確保された。
5-6-4 実験設備および施設利用機器について
分子物質開発研究センターは分子科学に共通性の高い物性機器を管理し,分子科学研究所内外の研究者の利用に供する 事が要求されている。また,化学試料の分析,低温冷媒の管理供給等にも責務を負っている。このためには機器の性能の維持, 設備更新等の検討が必要である。今後,これらの問題の検討のための委員会等の設置が必要であろう。分子科学研究所が設立 された時代には分子科学研究所の物性機器のレベルと一般的な大学の設備のレベルの間には大きな開きがあり,分子科学研究 所の設備を外部の研究者の利用のために公開することは,大きな意義があったものと思われる。しかし現在では多くの大学の設 備が著しく改善され,分子科学研究所の保有する物性機器のレベルはそれら大学の設備と変わるところが無く,所外利用者に公 開している物性機器の独自性は殆ど絶無に近い。むしろ多くの大学の研究室で保有している一般性の高い装置については,外 部利用希望者も多く,分子科学研究所内の研究者は利用できる時間を著しく制限され思うようには使用できない状況さえ実現し ている。一方,新センターの発足とともに助手は4研究部の助教授の研究グループに所属することとなり,今後,物性機器の管理, 公開を任務とした助手の更新は極めて困難となるであろう。また本センターの受け持つ研究支援業務は多岐にわたっており,現 在,共通物性機器の維持管理を担当している技官は1名のみである。この様な事態にいたり,今後,外部に公開する研究設備の レベル維持,新しい高性能装置への設備更新,外部研究者への対応などについてどのような方針を持って維持,運営していくの
将来計画及び運営方針 239 か,次年度以降の根本的な取り組みが要請されつつある。
これまで,一般公開機器についての問題点を述べたが,低温冷媒の液化,供給に関する設備の更新も継続的課題である。ま た,新センターの発足に伴い,分子物質開発研究センターの開発研究の推進力となる特色ある機器の導入が望まれる事は言う までもない。実現を期待したいところである。
5-6-5 運営委員会
本センターには点検評価の役割を持ち,センターの管理運営に関する重要事項を審議するために運営委員会が設置されてい る。本年度の委員は外部委員,白川英樹教授(筑波大),荻野博教授(東北大),内部委員,小林速男教授(委員長),山下敬郎助 教授,塩谷光彦教授,野上隆教授,芳賀正明教授である。本年度は平成 9年 12月に第一回の委員会が開催された。未だ,開発 研究についての点検評価等は不可能であるので,本センターについての基本的な考え方の説明が伊藤所長よりなされ,続いて 4研究部の研究課題名と簡単な内容の紹介などが行われた。次年度は,各センター助教授の研究室の研究環境の点検と研究進 捗状況,研究設備,研究支援業務等の点検評価が望まれるところである。